「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」はアニメ作品ドラえもんの劇場版であり、劇場版としては第48作品目にあたる作品です。
映画作品に毎回割り当てられている題材は「音楽」であり、これはシリーズとしては初のモチーフとなっており、映画公開連動企画として「ドラドラ♪シンフォニープロジェクト」と題して音楽隊のメンバーを小学生以下の子供たちから一般公募し、イベントやTVでその練習風景が紹介されたり映画のエンドロールに名前が記載さたりされました、また、スペシャルサポーターとしてヴァイオリニストの葉加瀬 太郎氏も招待されており、氏はプロジェクトのためにオリジナル楽曲「キミのぽけっと」の作曲も行われました。
そして本作は、原作者である藤子・F・不二雄氏の生誕90周年記念作品でもあります。
ひょんなことから謎の少女ミッカと出会い、ファーレの殿堂と呼ばれる場所に招待されたのび太たちが音楽の力で休眠状態のファーレの殿堂を復活させていくストーリーの映画です。
「響き合う!ぼくらの「音」の大冒険」
秋の音楽会に向けて、小学校の音楽の授業でリコーダーの練習をするのび太たち、しかしのび太は上手くリコーダーを吹くことができず、間抜けな”ノの音”を出してしまいスネ夫たちにからかわれる。そこでドラえもんの秘密道具のひみつ道具”あらかじめ日記”の存在を知ったのび太は、「今日は音楽がなかった。楽しかった」と日記に書きこむ。結果として音楽の授業は中止になり喜ぶのび太であったが、日記に範囲の指定をしていなかったため、世界中から音楽が消えてしまう。最初は大した問題では無いと思っていたものの大騒ぎになる街を見てドラえもんに泣きつくのび太、ドラえもんは日記の該当ページを破り捨てる事でなんとか事態をおさめるが……
作品感想
まず本作の最大の見所と言えるのが、作品各所に配置されたのび太たちが音楽を奏でる合奏パートです。ドラえもんというシリーズにおいてはおなじみの通りのび太というキャラクターはけっして器用な人間ではなく、作中においても各キャラクターが楽器を割り当てられる場面で彼だけは苦手なリコーダーに選ばれたり、演奏場面でものび太だけは毎回何かしらミスをしたり、パッとしない描写がされます。しかし、それがイコールで”下手なので音楽はまったく楽しくない”にならないのが作劇の妙であり、ミスも合奏が揃わなかった場面も、ラストへと続く布石として機能しています。
そして、本作のもう一つの隠された見所として上げられるのが、ドラえもんのひみつ道具などのガジェットを巧みに作劇に盛り込んだ伏線と、その回収です。 使い方次第で恐ろしいものになりえる”あらかじめ日記”をはじめとして、劇中で登場するひみつ道具はそれぞれ場面に応じてユニークな活躍をみせるだけではなく、その性質が伏線となり、クライマックスの場面において重要な役割を持ちます。映画としてやや漠然としたものである”音楽”をテーマにしながらも、一個のエンタメとして高い完成度を誇る本作は、機会があれば是非一度見ていただきたい名作と呼べる作品です。